空間系/非空間系

50 pears加藤の音楽ブログです。

新譜から見るHYUKOHのSuchmosっぽさ

HYUKOHの今年出た新譜が、新機軸であり、かつとても良かったのでレビューします。

 

僕が最初に知った時(2016年くらい)のHYUKOHはカッティングを多用するグルーヴィなインディロックって感じでした。ちょうど日本でもD.A.N.とかミツメが流行り始めていて、演奏技術がある人たちがクリーンな音でタイトなリズムで音を鳴らす格好良さは国境を越えるものだなぁと思った記憶があります。あとで知ったのですが、この頃のHYUKOHを紹介するネット記事なんかを読むと、「韓国のSuchmos」とか言われてたりしています。確かにシティポップ・ネオソウルといったジャンルの先駆者であり、また売れるまでの勢いの凄まじさには似たものがあります。

そのあと2017年にアルバム「23」、2018年にミニアルバム「24 : How To Find True Love And Hapiness」を出しますが、その頃にはかなりインディロック色は薄くなって、万人ウケする方向に進んだなという印象でした。特に「24」はかなりとっちらかった印象のアルバムで、リードトラックのひとつLove Ya!は壮大なコーラスワークのバラードという感じで、かたやCitizen Kaneはハードロック風の高速のナンバーでした。アルバムを通した音作りとしても、プログレっぽい部分やサイケっぽい部分もあり、正直何をやってるのかよく分からないという印象でした。

当時の僕は、売れた結果、大物バンドっぽくバリエーション豊かなアルバムを出したんだなくらいに考えていて、正直前の方が好きだなという感想でした。

そして今年に入って出したミニアルバム「through love」ですが、これはボサノバ色が強い、全く別の方向に進化したアルバムです。ただ今回のアルバムはとっちらかってる感じではなく、現代的なインディミュージックとのミックス感が絶妙でした。「Hey Sun」では柔らかい音像の中にファズ風の荒々しいリフが重なり、また最後のトラック「New born」では平坦なリフの繰り返しの後にディレイの発振を使った長いインプロ部分があります。

また、前作からあったプログレ・サイケ的な音作りですが、今作でははっきりと60年代リスペクトなんだと分かりました。それを踏まえて改めて前作を聴くと、露骨にビートルズっぽい部分もありました。今思うと、前作はこの絶妙なミックス感に至るまでの過渡期だったのかもと思います。

ここで、僕は去年出たSuchmosのアルバム「The Anymal」を思い出しました。Suchmosも、散々売れた後に誰に頼まれてもないのに60年代のサイケやブルースのリスペクトにあふれたアルバムを作ったわけです。偶然にもHYUKOHとSuchmosは、国は違えど、似たような道を歩んでいるような気がします。

彼らの姿勢は、売れてから徒らに音楽性を広げたわけではなく、一旦基本に立ち返り、音楽へのリスペクト、そしてギターやベース、ドラムといった楽器へのリスペクトを思い出して一から歩みを進めようという姿勢に感じます。音楽性を変える・広げるバンドは数多くあれど、この2バンドはその根本にある哲学が似ているように感じたので、こういう題名でブログを書いてみました。

 

気になった方はどちらのアルバムも是非聴いてみてください。

 

f:id:middlecaps:20200526133946j:image